砂子田 円佳さん(酪農家)vol.3「酪農をしやすくするには、私だけが頑張ってもダメ 」


▼目次

・酪農をしやすくするには、私だけが頑張ってもダメ

・酪農女性のためのサミットとは?

・ おばあちゃんになっても、現場で搾乳をやっていたい


酪農をしやすくするには、私だけが頑張ってもダメ

マドリン:今、やりたいことがあって。
私は、生まれ育った広尾町が好きで、この町を元気にするために何かしたいんですよね。
それこそ、この町の酪農をどうにかしたい、とか。
私たちがここで酪農を続けていくためには、自分だけが良くてもダメなんだって、サミットとかをやるようになって気づいたんですよね。

フミコ:そうなんだ。
てっきり酪農に関わる人を増やしたいからサミットをやってるんだと思ってたけど、そうじゃないんだね。

マドリン:そうですね。
すでに酪農をやってる人が多く来てることもあるんですけど、勉強したり、モチベーションをあげたりと、酪農女性のためのものですね。
例えば、女性が酪農家のお嫁さんとして来ると、全然違う世界から飛び込むわけじゃないですか。すると、何もわからないから、旦那さんやお姑さんから「やれ」って言われたことだけをやりますよね。そういう昔ながらの環境を変えたい、というか…

フミコ:「言われたままやっとけばいいのよ」というのを変えたいってこと?

マドリン:そうですね。
技術とかも大事だけど、酪農の仕事にやりがいを持ってやってる方が楽しいって思うんですよね。

フミコ:それだけ魅力のある仕事だし、マドリン自身が「酪農ってこんなに素敵な仕事なんだよ」と思ってるからだよね。
こんな素敵な環境で、素敵な仕事に就けるんだったら、前向きに楽しく働くことができるんだよって伝えていきたいってことなんでしょう。

マドリン:そうなんですよ。

フミコ:それをやっている内に、酪農を増やしたいとか、この町をどうにかしなきゃと思ったってこと?

マドリン:そうですね。
もちろん自分の牧場が良くなるために勉強することは大事なんですけど。
でも、広尾町として、広尾農協として、牛乳を出荷しているわけで。酪農家さんがどんどん減ったら、私も広尾町の牛乳を生産して出すことができなくなっちゃうわけで。

フミコ:確かに、そうだよね。

マドリン:それに、旦那さんの実家は青森県で酪農家だったんですけど、30年前は30〜40軒もあった酪農家さんが、今は3軒しかないんですって。
そうなると、獣医さんを呼ぼうと思っても、1〜3時間かかるから病気になったら死ぬのを待つしかないみたいな、酪農家さんに対する環境が良くないんですよね。

フミコ:そっかー。機械のメンテナンスとかもしにくくなるよね。

マドリン:そうそう。
この地域として、みんなが頑張ってくれるからこそ、この町で酪農家の私が成り立ってるんだなって感じたし、この地域の人たちの意識も変えたいなって思ってるんです。
「ただ酪農をやっている」だとか、「親から継いだ酪農をやってる」とかっていう意識を変えたいなって。

酪農女性のためのサミットとは?

フミコ:そうなんだね。
そういう想いもあって酪農女性サミットをやってると思うんだけど、具体的にはどんなことをしてるの?

マドリン:基本的には、酪農に関係する仕事に就いている人や酪農家の女性、農機具メーカーの人など、いろんな人が集まるイベントで、基調講演をやるのと、酪農家や酪農に関わる3人の女性に喋ってもらいます。

その他に、豊栄会(ほうえいかい)という私が所属している町内の酪農女性グループが、牛のぬいぐるみを使って、食育とか、仔牛が成長する過程みたいな牛の事を説明したりする人形劇をやります。
あとは、待ちに待った懇親会(笑)

フミコ:それも大事だよね(笑)

マドリン:でも、ただの懇親会じゃなくて、ファッションショーもやってるんです。
「Stron❤︎gyu(ストロンギュー)」という別海町の酪農女性グループが作業着メーカーさんとコラボしてツナギを作ったんですが、そういう作業着のファッションショーをしてます。

フミコ:そうなんだ。興味がある一般の人は参加できるの?

マドリン:はい、大丈夫です。
2018年は中標津でやったんですが、定員200人で240人ぐらい来てます。
2019年は300人が目標ですね。

(※2019年8月に取材。12月3日・4日にイベントが開催され、340名の方が来場され、スタッフ含め400名近くの人が集まりました)

フミコ:増やしたんだね(笑)

マドリン:みなさんすっごいパワーで!自分たちが圧倒されるくらいです(笑)

フミコ:そうなんだー。元気だよね、みなさん。

マドリン:そうですね。
一応、これが一区切りのファイナルなんですが、みなさんにはサミットで感じた事をそれぞれの地域に持ち帰ってもらって、ちっちゃいサミットでもいいからちょっとずつやってほしいなと思ってます。

フミコ:もうマドリンは、カナダのボスになってるよね。

おばあちゃんになっても、現場で搾乳をやっていたい

マドリン:いやー、まだまだです(笑)
私にとって、カナダのボスは「一生越えられない人」だし、「一生憧れの人」だなと思ってます。またいつかボスに会えたら、自分の話を自慢してできるようになっていたいなって思ってるから。

フミコ:そうやって伝染していくって素敵だね。
カナダから輸入してきたわけでしょ、その憧れを。
そしたら、マドリンを憧れに思う人も必ずいるよ。

マドリン:いてくれたら嬉しいな、と思います。

フミコ:憧れでもあるし、希望でもあるよね。
その希望があるから頑張れる人たちがすごく増えて、その子たちが誰かの憧れになっていって。
そうやって増えていくのがすごくいいよね。

マドリン:そうですね。
それがあるから「もっと頑張らなきゃ」って自分を掻き立てられるというのはあると思います。
そういう意味では、ボスに会えたことが今の私の酪農家として、すごい運命だったなと思いますね 。

フミコ:それに、その時、その時でよくわからないなりに、「自分にとって、これがいいだろう」というものを選択してきたわけでしょ。
勉強しようとか、ちょっと頑張ろうとか、そういうことの積み重ねが全部繋がって今があるんだよね。

マドリン:そうですね。なんか嬉しいですよね。
それに、酪農が天職だなって思えたのは、ボスに会えたからだと思ってます。
だからこそ、私はおばあちゃんになっても、現場で搾乳をやっていたいと思ってます。

フミコ:そうだね。これからも頑張ってください!
今日は貴重なお話を聞かせてくださり、ありがとうございました。

マドリン:ありがとうございました。

【インタビュア】
㈱いただきますカンパニー代表取締役
井田 芙美子(フミコ)


1980年札幌生まれ。羊飼いの修業と観光案内所勤務を経て日本初の畑ガイドに/起業後半年で離婚、事業と母業を両立させる為に株式会社化してシニアや主婦をガイド養成し年間2000名に十勝の農場を案内/農業と観光の連携、女性とシニアの活躍等で講演、受賞多数/2019春から帯広·札幌2拠点活動

㈱いただきますカンパニー

【ゲスト】
酪農家「株式会社マドリン」代表
砂子田 円佳さん(まどか)


広尾町出身。実家は酪農を営み、高校の頃から酪農家を目指し、「帯広畜産大学」の後継者向け学科に進学。20歳の頃、カナダ・ケベック州の牧場に住み込みで研修をしたことで、そこで理想の酪農の姿を見出し、帰国後実家を手伝った後2007年に独立。「株式会社マドリン」を設立し30頭の牛を飼い酪農経営に乗り出す。すべての作業を一人で担っていたが、2015年他の牧場で働いていた男性と出会い結婚。現在は二人三脚で牛と向き合う日々を送っている。

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